掌編「告白」2010年08月04日

「志乃さん」

 間違いなく彼女は志乃さんだったが、声を掛けるのに一瞬躊躇ったのには二つ理由がある。

 一つには、彼女が“何”志乃だったかを思い出せなかったから。互いにいい歳である上に、さして親しい間柄でもないかもしれない異性を下の名前で呼ぶのが好ましいかどうか。彼女がどう感じるか。判断が付かなかったのである。

 そしてもう一つには、そう、そもそも親しかったかどうかを思い出せなかったから。声を掛けてから、親しくはないどころか、あまり関わり合いになりたくない種類の知人であることを思い出すということが僕にはままある。

 それでも声を掛けたのはなぜだかはよく分からない。「つい」というのが正しい。

本文はこちら


 出口、らしきものこの作品は、mixiの「お題に合わせて短編小説を書こう」コミュのお題「少年時代」に参加。字数制限はコミュの仮規定2000字に準拠。

 


読書 長嶋有「エロマンガ島の三人」文春文庫

長嶋有アソート詰め合わせ。なにせ、1本目に表題作で“いつもの感じ”を漂わせておきながらSFと官能小説入りである。しかし最後にオチ(?)もある。相変わらず妙に細かくモノの名前が書かれていたりする。


小隊司令部発

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コメント

_ shigeru_carnaval ― 2010年08月04日 03時12分04秒

手馴れた書きぶりで感心しました。
ありがとうございました。

_ 小隊長 ― 2010年08月04日 06時28分34秒

またも早速のコメントありがとうございます。
着地点が同じなのではありますが、実は今回ちょっと難産でした。

_ いおりん FROM お題コミュ ― 2010年08月24日 00時59分59秒

拝読いたしました。
リアルですね。とてもリアルに感じられました。
きっとわたしも同級生は恋愛対象になってないからでしょうかね。
でも思うんですよ。この状況で彼女を口説かない男は「分かってないひと」だなあって。
しょうたいちょうさんは、いつも短く、でも的確にお話の流れを作り、きちっと締める。こういう端正な作品を書かれるところに憧れます。

_ 小隊長 ― 2010年08月24日 01時45分10秒

いおりんさん、コメントありがとうございます。
リアルには書けた気がしましたが、実話ではございません(苦笑)。

電車内で20年前に付き合っていた人に出会したり、娘の同級生の母親が小中時
代の同級生だった、とかいうシチュエーション上の参考になる体験はあります
が、実はそれらもこのお話とは全く無関係です。

ともあれ、ちょっと前の私でしたらやはり口説く話にしていた気もしますが、こ
のところの練習テーマが「残念な気持ち(どちらにとっても)」なので、こんな
お話になった次第です。どんなテーマなんだ(W

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