お誂え向き2016年07月18日

 この時期になると、上着を着ることは殆どない。主要得意先がクールビズ体制になるためというのもある。大抵スーツはハンガーに掛けっ放しになる。

 ところが先日は随分と寒く、上着があった方が良いかなと考えた。仕立てたばかりの緑色のスーツは、しかしその前日が緑色のスラックスだったこともありやめて、黒のスーツにした。

 暫く下しか着ていなかったのだが、スラックスは右後のポケットが少し擦り切れており、上着もよく見れば袖口に一部擦れがあった。そろそろ…いや、今年で終わりかな。1着作ったばかりだがもう1着必要か。

 そう言えば、亡父は私と違い服装にまったく頓着のない人だった。母が「上の人は身なりにも気をつけないと」と言って服を買ったりしていたのを覚えている。私は、好みがうるさいせいでもあるが、そんな風に身の回りの世話で服を買って貰うことなど殆どなかった。しかしうっかり擦れたタイなんかを締めていると、部下に指摘されることはある。

 前の勤務先では一時百貨店の担当になったこともあり、年数回のオーダースーツ注文会みたいなイベントの付き合いでスーツを作っていた。同僚達はブランドのスーツが着たいものだと嘆いていたが、私は色の好みの問題もあってこちらの方が悩まなくて済んだ。それに実は別にそんなに高い物でもない。大概3-4万だ。これが習慣となり、いまでもスーツは基本的にイージーオーダーで作っている。

 今年は珍しくいつも利用する店で気にいる色の生地が在庫されていたため1着作ったのだが、上がってひと月経たないうちに同じブランドの生地の半額セールのDMが届いた。尤もどうせよくある色の生地ばかりだろう。しかし駄目になったスーツも単なる黒だし、補充用としてはお誂え向きだ。…いや、何にしても誂える訳だが。

小隊司令部発

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