年寄り2012年04月25日

 乗換駅で階段の下まで来ると、目の前に流れてきたのはよろよろと歩く年寄りだった。右側通行の階段だが左端の通路からが上り初めで、左側の端に1人分空けた辺りを上るのがいつもの私だが、年寄りは私の前を横切ると、左端の手すりに掴まった。手すりに縋るようにして階段を上っていく年寄りに「右側歩きなよ」と言う様な人間もいまい。私ですら言わない。問題は、その年寄りを避けて降りてくる奴が、私の目の前に来るということくらいか。まあ年寄りだから仕方がない。仕方なく更に1人分右へ寄ると、左に並んで来る奴がいて、やはり年寄りを避けて降りてくる人間と鉢合わせしていた。

 ふと見上げると奇妙なことに気付く。周りは皆、自分と同じか若い人間で、年寄りは斜め前にいるその老婆一人なのだった。奇妙? いや、奇妙だろうか。しかし一度奇妙に感じてしまうとそれが頭から離れなくて、プラットホームでも人混みの中に年寄りを探しながら歩いてしまうのだったが、果たしてそこには普通に年寄りがいた。

 午前中の中途半端な時間帯のために車内も人が疎らだったが、さすがに座席は一通り埋まった。私はあまり座った時には文庫を開かないのだが、ノートでやる事もないし、眠くもないのに目を瞑るのはあまり好きではない。読むともなしに読みかけの文庫を開き文字を追っていると、斜向かいに二人連れの女が立った。

 終電まで男と呑んだとか、その男が存外子供っぽいだとか、別の日にその男が連れてきた女が馬鹿な女だったとか、そんな話を延々している。要するに酷く下品である。しかもその二人、蓮っ葉なギャルではない。黙っていたならば席でも譲ろうかという様な歳の和装の女である。聞いていると、どうやらその男というのは店の客のことらしく、この二人は朝から客の陰口を叩いているのだった。

 歳は美しく取りたい。そんな事を漠然と考えている内にあっという間に年寄りなのだろう。やれやれ。

筆者注)ちなみに私は今年46。微妙。


小隊司令部発

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