掌編「告白」2010年08月04日

「志乃さん」

 間違いなく彼女は志乃さんだったが、声を掛けるのに一瞬躊躇ったのには二つ理由がある。

 一つには、彼女が“何”志乃だったかを思い出せなかったから。互いにいい歳である上に、さして親しい間柄でもないかもしれない異性を下の名前で呼ぶのが好ましいかどうか。彼女がどう感じるか。判断が付かなかったのである。

 そしてもう一つには、そう、そもそも親しかったかどうかを思い出せなかったから。声を掛けてから、親しくはないどころか、あまり関わり合いになりたくない種類の知人であることを思い出すということが僕にはままある。

 それでも声を掛けたのはなぜだかはよく分からない。「つい」というのが正しい。

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 出口、らしきものこの作品は、mixiの「お題に合わせて短編小説を書こう」コミュのお題「少年時代」に参加。字数制限はコミュの仮規定2000字に準拠。

 


読書 長嶋有「エロマンガ島の三人」文春文庫

長嶋有アソート詰め合わせ。なにせ、1本目に表題作で“いつもの感じ”を漂わせておきながらSFと官能小説入りである。しかし最後にオチ(?)もある。相変わらず妙に細かくモノの名前が書かれていたりする。


小隊司令部発

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