「暑いですね」2010年09月03日

 ご近所の挨拶はまだ当然「暑いですね」である。「そうですね」と返すと、「お仕事大変ね」と言われる。しかしデスクワーク以外では、得意先回りや打ち合わせと言っても、大半は駅ビルに入っているか駅ビルそのものであったりするので、実際に仕事中の屋外移動で暑くてしょうがないという思いをすることは少ない。屋外はせいぜい1度に5分程度しか歩かない。

 平日1日の内で最も暑い思いをするーー現に汗をかくという意味でーーのは、実は朝の通勤時に自宅から最寄り駅までの10分程度の道程である。電車に乗った後、乗り換えの高田馬場までの20分は、ずっと汗を拭っている。あるいは西武線は冷房のための費用をけちっているのかも知れない。

 こんな時にホームの定位置でない場所でうっかり乗ろうものなら、下手をすると弱冷房車なんぞに当たりかねない。朝の通勤時の弱冷房車は何かのつまらない冗談の様だ。女性専用車に掛かる意味不明の沢山の例外に匹敵するつまらない冗談だ(あれは銭湯と混同しているとしか思えない)。

 それはさて置き、今朝駅までの道で、腹を上にして路上に転がっている蝉を見掛けた。“死んだ蝉”はなぜだか人が近付くと狂った様に飛び跳ねる。知人の姉が、何を怖れるって、蝉のそういうところほど怖いものはないと言っていたそうである。その話を聞いた直後だったので、半ば嬉しくなりそれを証明すべくわざと近付いた。果たして蝉は、昔に駄菓子屋で売っていた玩具の様に喧しい羽音をたてて暴れ回り、私の脚に激突して隣地の庭に転がっていった。

 蝉の死骸を見て行く夏を惜しむというのがあるが、寿命1週間の虫なのだから、取り立てて夏の終わりに集中して死んでいるという訳ではない。それより、今年は猛暑が長引く様だから、蝉の死骸が弾切れになり「虫で感じる季節感」の空白が出来はしまいかと余計な懸念を抱きつつ、駅までの道を歩いていた。蜻蛉やコオロギにはまだ暑かろう。


読書 フィリップ・K・ディック/朝倉久志訳「アンドロイドは電気羊の夢を見るか?」
ハヤカワ文庫SF(再読)

この話、出だしはデッカード夫妻の諍いシーンだったんだな。結構所々忘れている。いつ以来の再読か全然覚えていないが、栞代わりに挟んであったのは当時通っていた日比谷バーのサービスチケットで、有効期限は'93年8月となっていた。丁度17年も前か。これだけ生きながらえているのだから、私はアンディーではないようだ。


小隊司令部発

本欄はサイト内の各コンテンツの更新とは別に、概ね2〜5日毎に更新中。バックナンバーは「公文書」でもどうぞ。ブログ部分は「人気ブログランキング」に自転車カテゴリーで参加中。ワンクリックのご協力を。