静かな街2014年08月14日

 終電間際の列車で何とか最寄り駅に辿り着く。仕事は閑だが遊ぶ心の余裕もない。

 駅前の遊歩道を抜け通りに出るがクルマは1台もない。交差点は赤になったが、前を歩く人はそのまま渡ってしまった。

 性分か何なのか、信号無視で交差点を渡る気になれないのだが、傍目には「誰もいない交差点で何やってる?」という態になるのも厭で、こういう時には普段いじらぬスマートホンなぞ取り出して意味なく画面を眺める。

 観る人もない小芝居をしている内に青になり、名ばかりの商店街を抜ける。商店街と言っても市道の両側に個人商店が並ぶだけでアーケードなどでもない。元々はその先の突き当たりにあった巨大団地で回っていたが、寂れた社宅団地が十数年前にゼネコンに売却されるなり遺跡の発掘で開発中止になってしまい、商店も次々閉まってしまった。

 築何十年かという木造二階建ての住居兼店舗が今もいくつか残っており、中には地元で人気の豆腐屋や、地元出身都議の仮事務所なども入っているが、八割方は空き家だ。

 他に、何棟かあるマンションの1階が商用で、家賃がそれほどでもないのか大して客の入っていなさそうな店も細々とやっている。以前はよく覗いていたパブもあったが、既にない。ママがやっているやきとり屋は近くに健在でよく寄っているが。

 その商店街を抜けてすぐが我が家のある通りだ。武蔵野地区によくある新田式の街なので、地主の所有地毎のブロックで行き止まりの道も多い。

 この数日で取り壊している家の黴臭さが、通りを覆う。湿度が高くて臭いが滞留しやすいのだろうか。脚は悪いがしゃんとした老婆が一人暮らししていた木造の平屋があった場所だ。町会報に訃報はなかったので、あるいは親族の所へ行ったのかも知れない。

 帰り着くと夏休み中の娘二人が起きていた。アンダーなテンションを悟られるのも厭なので、早く寝ろとだけ言ってシャワー後ビールを掴んで部屋に入った。

小隊司令部発

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