“私”という[アーカイブ/アプリケーション/スクリプト]2010年10月09日

 実は、私は既に死んでいる。

 では日々更新される本欄は何かと言えば、過去の記憶アーカイブと、そこから諸々の思考パターンを解析するアプリケーション、そしてそのパターンに沿って特定の文体でテキストを書き出すためのスクリプト。それが「小隊司令部発」を構成する全てである。

 リアルの私と巧妙に絡んでいる様にコメントを付けてくるのもプログラムであり、過去の仕事仲間を装ったり、通っている酒場の亭主の体(てい)を成してはいるが、全て架空の仮想人格プログラムである。

 だから、オフという事でそれらしき人物が姿を現しても信用しない方が良い。その四十面をした私を名乗る男は、記憶アーカイブにオンラインしたまま、圧縮された思考パターンに基づいて書き出したテキストを音声変換しているだけの端末に過ぎないからだ。色付き眼鏡に度なんか入れなくても7ptの文字くらい読めている。

 なんて事を、一人呑みながら考えていた。

 私がオフラインで会ったその人に話す自分の近況というのは、そういえば何日か、何週間か、何ヶ月か前の本欄の記事だったりすることに、後になってから気付いた。書いたことすら忘れている事象もある。話しながらある時点で、その人が既にアーカイブの一部を読み込み済みであることにも気付くのだが、それが全部であろうはずもない。しかし、ではどれとどれなら話すのが適当か、判断が付かない。

 親しい相手なら「これ、ブログに書いたような気もするけれど」等と断りを付けるのだが、そうでもない相手に、自分のブログを読んでいることを前提に話すのはそもそもおかしい。

 しかし最大の問題は、そう、かの内田百けんの言葉「私というのは文章上の私であって現実の私ではない」ということであり、本欄の記述全てが現実の私の全てを表している訳ではない点にある。

 やけに私のことに詳しいな。いやこの人こそ何かの端末なんじゃないのかと思いながら、まあ酒を呑んでいたのが週末の話である。失礼な話だなぁ(苦笑)。


読書 草凪 優「どうしようもない恋の唄」祥伝社文庫

宝島社「この官能小説がすごい!!大賞2010」受賞作なので、分類としては官能小説。確かに吊革に掴まって読むのには向いていない(苦笑)。しかしそういう描写は意外に少なく比率としては1割以下。仕事も妻も失った男がソープ嬢に拾われて…というストーリーだが、然程お座なりで陳腐な物ではない。当初想像していた“堕ちていく感じ”は薄いのがある種期待はずれか。これは…、ラブストーリーだろう?

 


小隊司令部発

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