二十一時四十三分2013年11月09日

 21時43分。その様に時間を意識するのは、私が酒呑みだからではないか。そうでなければ、その時間は家で風呂に浸かっているかも知れないし、借りて来たDVDだかBDだかを観て時間を潰しているだろうが、いずれにしても酒場にはいない。帰るべき場所以外の所に居て、帰るべき時間を推し量っているからこそ気になるのだ。

 酒場とは時計が無い場所だという。時間を気にせずにゆったりと時を過ごせる様にという事でその様にしている店は多い。酒場について書かれた“ものの本”には多分大抵そのように書かれているし、実際まともな酒場には、本当に時計は掛かっていない。銀座、歌舞伎町、ゴールデン街、方向性は様々なれど私の通う酒場のある街では、確かに時計を見掛けない。

 しかしね、実のところは酒場に時計を置かないでいる実質的な意味なんかないんだ。確かに腕時計を見つめながら呑んでいる奴はいない。しかし、いま酒場で携帯電話の画面を覗かない奴は滅多にいない。それどころか、店に入って来てから誰とも口をきかずにずっと携帯の画面を見つめ、延々キーだかキーの形をした画像パーツだかを指でなぞっている様な客ばかりだ。

 何も批判・非難をしている訳ではない。それどころか、どちらかと言うなら自分もそちらの類の人間だろう。

「Sさん、いつも誰にメールしてるんですか?」
「メールじゃないです。ツイッターですよ」
「どっちでも同じでしょ」
「それはそうですね」

 そうでもあるし、そうでもない。でも、どっちでもいいやという意味で、どっちでも同じである。

「キャバの娘がメール寄越してね、俺に会いたいから今度のママの卒業記念日に来てってさ」
「それ、[会いたいから]までの文章関係ないでしょ(笑)」と私。

 何と繋がっているか。繋がっていて嬉しいかは人それぞれだ。いろんな人がいる。真っすぐ家に帰っていては知り様も無いだろう。知る必要も、ないんだがね。


小隊司令部発

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